ライアン・ウェディングのコレクション

●メキシコ、アメリカ合衆国、カナダの当局が共同で、ロサンゼルスを拠点とするコカイン・カルテルを運営する「ライアン・ウェディング」のメキシコにおけるアジトを捜索すると、MotoGP マシンを含む62台のバイクコレクションを発見し押収した

●FBI ロサンゼルス支局は、2025年12月30日午前6時、ソーシャルメディアプラットフォーム X にて、そのニュースを発表し、バイクの画像も公開した

●62台のバイクの価値は、4,000万ドル(約62.5億円)と評価されている

●ライアン・ウェディングが、それらレーシングバイクをどこで入手したのかは不明

は~、昨年末にこんな大捕り物があったんですねえ。全く知りませんでした。
Wow, so there was such a huge bust at the end of last year? I had absolutely no idea.

画像にある POWER HOUSE MOTOR CLUB のロゴタイプを見た海外のメディアから、何かしらの情報を得たいとのメールをもらい、初めて気づいた次第です。
I only found out when overseas media saw the POWER HOUSE MOTOR CLUB logo in the images and emailed me wanting to speak about the motorcycle belonging to Ryan Wedding.

ちなみに、このブログの熱心な読者であるM.N.氏から、なんと12月31日午前3時16分に「通報」(本人談)いただいております。なんという情報の早さ!
Incidentally, Mr. M.N., an avid reader of this blog, actually “reported” (his own words) it to me at 3:16 AM on December 31s. What incredible speed!

多くの人は、これらの MotoGP マシンが気になるのでしょう。FBI の X でもその話題で持ちきりです。
Most people are probably curious about these MotoGP machines. The FBI’s X is buzzing with talk about them.

そのような中、私の目が釘付けになったのは、たった4枚の画像のうちその半分を占める赤&金のベベルです。62台の錚々たるバイクの中から選ばれたということは、FBI捜査官に何かしら強く訴えかけるものがあったのでしょうね。
Amidst all this, what caught my eye was the red & gold Bevel , which took up half of the mere four images. Being selected from among 62 prestigious bikes must have meant it strongly appealed to the FBI agents in some way.

(どうにも気になっているのが、赤&金ベベルに後ろにあるチーム・ガリーナの SUZUKI RGB500 です。これって、2000年代初頭、ガリーナさんと知己のM田さんがイタリアから日本に送り、横浜の 2・beat の在庫車となっていたものでしょうか? Rサスがフルフローターではなく、2本サスというのが特徴なんですが・・・見えません!)
( What really catches my eye is the Team Gallina Suzuki RGB500 behind the red & gold Bevel. Could this be the one Gallina-san and his acquaintance Mr. M sent from Italy to Japan in the early 2000s, which became part of the inventory at Yokohama’s 2·beat? Its defining feature is the twin rear suspension instead of a Full-Floater… but I can’t see it! )

この赤&金ベベルは市販車の改造車ではありません。「ケニーズ」が1982年の鈴鹿8時間耐久レースに英国の「 SMC 」を招聘したことに大いに刺激を受けたPHMC中野が、翌1983年の鈴鹿8耐参戦をターゲットに、当時の「 NCR 」から引っ張ってきたレーサーなんです。目を引く赤&金のカラースキームは中野のセンスです。
This red & gold Bevel wasn’t a modified street bike. It was a pure racing motorcycle brought over from NCR at the time by then PHMC president Tetsuo Nakano, who was greatly inspired by “Kenny’s” invitation of British racing team “SMC” to the 1982 Suzuka 8 Hours Endurance Race. Nakano targeted the 1983 Suzuka 8 Hours for its debut. The eye-catching red & gold color scheme was Nakano’s own design.

赤&金ベベルは、日本に入ってからは中野自身のライディングで筑波のBOTTなどを走っていますが、

結局、鈴鹿8耐を走ることはありませんでした。しかし、これにはむしろイイ話があるのです。ちょうどその頃、当時の最新レーサー「600TT2」が村山モータースに入ってきたのです。当然のごとく、比較テストをしてみようということになりましたが・・・もうお分かりですね、排気量が少ない TT2 の方が速かったのです。
After arriving in Japan, the Red & Gold Bevel has been raced by Nakano’s riding at races such as the Tsukuba BOTT, but it never actually competed in the Suzuka 8 Hours. However, there’s a rather good story behind this. Around that time, the then-latest racer, the “600 TT2,” arrived at Japanese DUCATI importer Murayama Motors. Naturally, they decided to do a comparison test, but as you might imagine, the TT2 with its smaller displacement was faster.

PHMC は1983年の鈴鹿8耐に2台の TT2 (650㏄仕様)を走らせ、予選42位と49位ながら、決勝は18位と21位という好成績を残しています。しばらくの間この成績は、鈴鹿8耐における DUCATI の最高順位であり続けました。
PHMC entered two TT2s (650cc spec) in the 1983 Suzuka 8 Hours. Despite qualifying 42nd and 49th, they finished a strong 18th and 21st in the race. For quite some time, this remained Ducati’s best result in the Suzuka 8 Hours.

細部を見ようにも画像の解像度が足らないのが歯がゆいところですが・・・日本の DUCATI ファンにとって、このうち何台かのバイクは見覚えがあり、さらに DUCATI マニアであれば、何台かのバイクの出どころも分かるはずです。
It’s frustrating that the image resolution isn’t high enough to see the details clearly… But for Japanese Ducati fans, some of these bikes will look familiar, and true Ducati enthusiasts should recognize where several of them comes from.

PHMCの赤&金ベベル( NCR 860 )は、F県F市の有名な DUCATI コレクター、F氏のコレクションだったものです。中野の自宅車庫に長らく仕舞い込まれていたそのバイクは、21世紀に入ってからF氏に売却され、F氏が走行可能までレストアしたという経緯があります。
The red & gold PHMC Bevel (NCR 860) was part of the collection of Mr. F, a famous Ducati collector from F City, F Prefecture. Stored away in Nakano’s home garage for a long time, this bike was sold to Mr. F after the turn of the century, who restored it to running condition.

手前の赤と緑のベベル( NCR 950 )もF氏のコレクションで間違いありません。
The red and green Bevel (NCR 950) in the foreground is undoubtedly also from Mr. F’s collection.

となると・・・F氏のコレクション目録にある「2019年5月にヨーロッパに送られた」という3台が、ライアン・ウェディングの手に渡ったと考えられますが・・・。
This leads us to believe… the three bikes listed in Mr. F’s collection inventory as “2019-May send to Euro Thanks!! (= Shipped to Europa in May 2019)” likely ended up in Ryan Wedding’s hands…

車両がライアン・ウェディングの拠点であるロサンゼルスあるいはメキシコに直接送られなかったのは、間に代理人がいるからでしょう。車両コレクションにはライアン・ウェディングの純粋な趣味もあったのでしょうが、マネーロンダリングの意味合いもあったでしょうから、入手経路は複雑化されたと推測されます。
I guess those motorcycles weren’t sent directly to Ryan Wedding’s base in Los Angeles or Mexico because an intermediary was involved. While Ryan Wedding’s motorcycle collection likely stemmed from his pure hobby, it probably also served money laundering purposes, suggesting the acquisition routes were made complicated.

元オリンピアンの麻薬王
The Former Olympian Cocaine Lord

ライアン・ウェディングは、2002年にユタ州ソルトレイクシティで行われた冬季オリンピックにスノーボード競技カナダ代表として出場した過去を持つといいます。そんな一流アスリートである彼が、凶悪犯罪者に変貌した経緯は興味深いですね。
Ryan Wedding reportedly competed as a member of the Canadian snowboarding team at the 2002 Winter Olympics in Salt Lake City, Utah. The story of how such a top-tier athlete transformed into a violent criminal is fascinating.

●ライアン・ウェディングは 1981年9月14日、スペリオル湖の北岸に位置するカナダの小さな町サンダーベイで生まれた(現在 44歳)

●ライアン・ウェディングの祖父母はサンダーベイのマウント・ボールディ・スキーリゾートを所有していた。両親も裕福だった。彼はそのスキー場でスノーボードを習得したという

●2002年、ソルトレイク冬季オリンピックにてスノーボード競技のカナダ代表として出場したが。男子パラレル大回転で29人中24位という残念な結果に終わっている

●オリンピック期間中もコカインを常用していた(まだユーザーの立場だった)

●2008年、ライアン・ウェディングら男3人は、コカイン密売目的でカリフォルニア州サンディエゴへ渡航した。彼らが会う約束をしていた売人は、FBIの潜入捜査員で、彼らは逮捕されてしまう。

●ライアン・ウェディングの裁判は2009年11月から始まったが、殊勝にも彼は裁判所と家族に対し深い反省の弁を述べ、2010年5月の結審において、コカイン密売共謀罪としては比較的軽い4年の実刑で済むことになった。彼は2011年12月に釈放されている

●ライアン・ウェディングは釈放後、薬物犯罪組織を立ち上げ、カナダ最大のコカイン密売業者に成りあがった

●ライアン・ウェディングの組織はメキシコのシナロア・カルテルと組んで、年間60トンものコカインを、コロンビア → メキシコ → ロサンゼルスのルートで密輸していた。ロスの拠点からカナダや他の州へ配送されていた

●ライアン・ウェディングの組織は、ライバル組織への報復、敵とみなした人物への攻撃、法執行機関への協力者への襲撃などで、「恐怖の雰囲気を醸成」し、「世界で最も活発で暴力的な麻薬密売組織のひとつ」と目されるに至った

●ライアン・ウェディングは、自身に不利な証言をする予定だった連邦公務員の証人に「数百万ドルの懸賞金」を懸けた。証人はコロンビアのメデジンにあるレストランで、証言を行う前に射殺されている

●密輸した麻薬を盗んだ者への報復として、カナダに住む3人の殺害を指示した。2人は殺され、1人は生き延びたものの重傷を負った

●2024年10月、ライアン・ウェディングは FBI ロサンゼルス支局によって、麻薬密売、複数の殺人、証人買収・脅迫、マネーロンダリングなどの容疑で起訴され、メキシコ、アメリカ合衆国、カナダの法執行機関による捜査対象となった

●ライアン・ウェディングは、FBIの「最重要指名手配犯10人」のうちのひとりとして名を連ねている

●FBIは、ライアン・ウェディングの逮捕または有罪判決につながる情報に対し、最高1,500万ドル(約23.5億円)の懸賞金をかけている

●メキシコでライアン・ウェディングの警護を行っている「ジェネラル」こと「エドガー・アーロン・バスケス・アルバラード」は、元メキシコ法執行官で、ライアン・ウェディングの標的を探す際に法執行機関の情報を利用していた

●ライアン・ウェディングの妻「ミリアム・アンドレア・カスティージョ・モレノ」は、組織の資金洗浄を担当している

●62歳の組織の顧問弁護士「ディーパック・バルワント・パラッカー」は、各種の犯罪行為を支援した容疑で逮捕されている

●ライアン・ウェディングは現在逃亡中で、シナロア・カルテルの庇護の下、メキシコに潜伏している

1 thoughts on “ライアン・ウェディングのコレクション

  1. 詳報ありがとうございます。
    ドゥカティとカワサキが多そうですが、管理が厳しそうな近年のモトGPマシンなども入手ルートがあるんですね。シーズン後ライダーにボーナス的に贈与された車両だろうか?などと想像しますが。。。

    MVアグスタのレースバイクもあるようですが、GPマシンではなく4C市販車両改造かマーニ車のような気がします。
    恐らくは競売にでも出されるのでしょうから、その際には車両の情報がいろいろと出てきそうですね。

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