2018/08/01 小田原のボンドがやって来た!

唐突ですが、900SS駆る小田原在住のMさんの愛車、ロータス・エスプリ・ターボSEをご紹介いたします。というのも、Mさんのオーナーならではのマニアックなアプローチで解説を伺える絶好の機会と思われたからです。


ウエッジシェイプの代名詞、折り紙細工とも称されるエスプリのフォルムです。ホイールも含めてオリジナルの状態です。

この個体は1991年製(90年型)のターボSE(Special Equipment)というモデルで、デザインは当時ロータス社のチーフデザイナーだったピーター・スティーブンス氏が担当しました。スティーブンス氏はその後独立して、マクラーレンF1やスバルインプレッサのデザインを担当します。


エスプリというと映画007で潜水艦になりますので、「これ、海に潜れるの?」と友人からは揶揄されますが、海に潜れるどころか、窓やらルーフやらに隙間があって雨漏りします。

フロントとリアのハッチを開けたところです。隣りの黒い車と比較すると車高がいかに低いか分かります。

ボディサイズは長さ、幅、高さがそれぞれ433cm、186cm、115cm。自分のは車高を3cmほど下げているので112cmしかなく、ほぼ大人の腰の高さです。


やっぱりスポーツカーはリトラクタブルライトですね。この車両は英国仕様ですが、当時の正規輸入車は左ハンドルの北米仕様なので、並行輸入で入ってきたものかもしれません。なお英国仕様のライトは北米仕様よりやや径が小さいとのことで互換性がありません。同じモデルでも仕様が違うのは国ごとの保安基準の差でしょうかね。


これはリアウインドウを拭くデモをしているところです。


この型のエスプリはトランクとエンジンのカバーがあってリアウインドウの内側に手が入りづらいのです。そこで、エンジンの廃熱ダクト(写真の右手部分)から手を入れて拭くわけですが、車体の外側からだと手が入らないので、こうしてトランクに仰向けに寝そべって拭くわけです。

このリアウインドウがキレイかどうかでオーナーの心意気が感じられると、プレッシャーがかかる箇所です。

リアゲートを開けるとエンジンフードがあります。ルーバーはエンジンの廃熱用です。


カバーを外すと、縦置き直列4気筒のエンジンが現れます。写真の向って右が吸気側で、左が排気側です。赤い物体はターボで圧縮した吸気を冷やす液冷式クーラーです。(エスプリではチャージクーラーと呼んでいます)


外したエンジンフードです。いつも置き場に困ります。しかもエンジンの熱でカンカンに焼けるので、軍手は必携です。


車体左側のダクトはエンジンルームの冷却用です。


車体右側のダクトは、エンジンの吸気孔です。


シールの貼っている黒い物体がエアフィルターのカバーで、ダクトから入った空気はこのフィルターを経由して、液冷式クーラーで冷やされてエンジンに送り込まれます。


ターボで温まった空気を冷やすところです。インレットマニホールドが見えます。


LOTUS CHARGE COOLERと書かれた箱状の物体がいわゆるインタークーラーです。この箱の中を吸気を冷やすための冷却液が循環します。ちなみに冷却液を循環させるインペラは硬質のゴム製で欠損してしまうことがあるそうです。このゴムのインペラが健全かどうかは、エンジンを始動して、インタークーラーのリザーバータンクのキャップを開けて冷却液が動いているかどうかで確認します。


インタークーラーの下にカムカバーが見えます。エスプリのエンジンは、ボクスホール(Vauxhall)社製のブロックをベースにロータス社が独自開発した直列4気筒エンジンですが、重心を下げるために45度寝かして搭載されています。プラグコードの位置からエンジンが斜めになっていることが分かると思います。縦置き4気筒のエンジンがリアのバルクヘッドのすぐ後ろ、ギリギリに載せられています。


45度傾けてあるのは、将来的にV型8気筒エンジンを搭載するためだったとも言われており、事実、エスプリの最終型はロータスオリジナルのV8を搭載しています。そう考えるとこの直列4気筒エンジンはV8の片側バンクともいえます。

エンジンついでに言うと、ロータスの歴代および現行モデルのほとんどが他社製のエンジンを搭載しています。古くはルノーやフォード、現在のエリーゼやエキシージはトヨタのエンジンです。


ギャレット製のシングルタービンのどっかんターボです。エンジン回転数で3000回転辺りから過給がかかり始め、そこから一気に吹き上がって行きます。

エンジンのボアストロークは、95.3mm × 76.2mmと超ショートストローク。最高出力265馬力を6500回転で発生させますから、回転馬力でパワーを出すタイプのエンジンです。全体にトルク感は薄く、3000回転未満では国産の2000ccのセダンの方がパワーがあります。ターボラグも大きいですから、速く走らせるには3000回転付近、過給圧0.2bar程度の状態をキープして、そこからアクセルを開けるようにします。

フロントトランクはスペアタイヤに占められています。


ホイールはOZのアルミです。


ホイールのリム幅、タイヤ幅/偏平率-リム径はそれぞれ下記の通りです。

    前: 7.0J、215/50-15
    後: 8.5J、245/50-16

前タイヤは、15インチですが、このサイズはもう作っていないので、自分は1サイズ細い205/55-15を履いています。


カタログによるとエスプリSEの乾燥重量は1270kgです。シャーシプレートは車両総重量表示で1566kgとあります。前輪荷重は656Kg、後輪荷重は910kgで、この数値からすると前後比は、42:58なので意外にリアヘビーです。


大きな1本ワイパーです。国産車用ワイパーブレードはそのままでは付かないので、アダプターをかまして取り付けます。


ドアミラーはシトロエン製です。電動格納装置はないので、駐車の際には手でたたみます。


エスプリの給油口は左右に2つあります。


ガソリンタンクも運転席と助手席のすぐ後ろに、左右に分かれて2つありますが、パイプで繋がっているので、どちらの口から給油しても2つのタンクに給油されます。ただしこのタンクを繋ぐパイプは細いので、ゆっくり給油しないと片側だけ一杯になってしまいます。

ガソリンタンクが2つに分かれているのは、エンジンが限りなくバルクヘッドに寄せて搭載されているため、ガソリンタンクの置き場がないことによります。ガソリンタンクは満タンにすると相当の重量になり、(エスプリのタンク容量は73リットル)しかも燃料消費によって重量が変わりますから、車体の中央に配置するのが理想的です。そこで、36.5リットルずつ2つに分けて搭載しています。

リアゲートは、全面ガラスですし、エンジンカバーなども付いて相当に重たいです・・・


が、ヒンジは「こんなんで大丈夫か」と思うくらい華奢で、しかも鉄板を切って曲げただけのようなテキトーな物です。


エンジンの後ろにトランクがあります。容量はそこそこありますが、下にミッションとマフラーがあって浅いので大きい物は入りません。また、エンジンとマフラーの熱で相当に熱くなりますので、食品なども入れられません。


ウオッシャー液のタンク。


バッテリー。


リアランプをよーく見ると下の方に「TOYOTA」の文字が読み取れます。この部品、AE86レビン(前期型3ドア)のものなのです。

この車、妻には内緒で買ったのですが、納車日前夜に「実は車を買って、、」と白状してショップのホームページに
掲載された現車の写真を見せました。後ろからの写真を見た妻が「えっ、カローラを買ったの?」。ペーパードライバーの妻ですが意外に車をよく見ているものだと驚きました。

ドアノブは初期型ランドローバーの流用品です。


エンブレムの文字は、ロータスの創業者、アンソニー・コーリン・ブルース・チャップマン(Anthony Colin Bruce Chapman)の頭文字を重ね合わせたものです。


前述の通り、ロータスでデザインしていますから、そう書いてありますね。


ガラスルーフはチルト機構で開けることができます。わずかに開く程度ですが、ボディ後部の負圧によって室内を十分に換気できますのでエアコンの効かないエスプリでは、とても助かります。

雑誌の記事によるとこのルーフは取り外しできるそうですが、自分はやったことがありません。ガラス製でとても重たく、一人では絶対無理です。


狭い2シーターであっても室内が明るくなるため開放感はあるのですが、何しろ暑いという難点があります。一方、冬は温室の中にいるみたいに暖かくてよいです。やっぱり寒い土地柄の車だからでしょうか。


左下がリバースの5速ギアです。リバースに入れるときはノブの下にある円盤を持ち上げますが、ギアがなかなか入らず苦労します。


ミッションはルノー製、アルピーヌV6ターボからの流用です。右ハンドルだと、リバースギアは左手でレバーを外側に押し出すようにして入れますので、大胸筋を伸ばすような不自然な動きとなります。これが元のフランス車の左ハンドルの場合では、レバーを右手で手前に引き寄せる動きになりますから、ずいぶん楽だと思います。実際、エスプリを運転した後は、左腕とその付け根の筋肉が相当に疲労します。

リクライニングの調整ができます。


シートは前後にも動きますから、調整の自由度は高いのですが、平均的な日本人の体型(自分は身長174cm)で、ハンドルに合わせるとクラッチが遠くなります。そこで、シートを前寄りにして、リクライニングをやや倒し、ヨーロッパの古典的なストレートアームポジションで丁度良い位置になります。

コノリーレザーで覆われた豪華な内装です。


英国職人によるステッチ。


運転席側のサイドシルの上にサイドブレーキがあります。


写真のように引いた(上げた)状態でリアブレーキをロックします。この状態でもレバーは下にペタンと倒せるので、停車時はサイドブレーキを一旦上げてブレーキをかけ、その後レバーを倒して、乗降します。レバー上のボタンを押すとブレーキはリリースされます。

鋼板製のボックス断面のバックボーンフレームは、エラン、ヨーロッパと続くロータス2シータースポーツの伝統です。そのため室内には高く幅広のセンタートンネルが突き出る形となります。


シフトを操作する左腕は、このセンタートンネルをこするように動かします。この高く幅広なセンタートンネルと、車幅自体が186cmもあるので運転席から助手席のグローブボックスにあるものを取ることはできません。なかなかに不便です。

シートベルトもおそらくトヨタ製でしょう。


オリジナルのインパネは木目の美しい木製ですが、表面のニスがひび割れていたので、ショップさんに黒のビニールレザーを貼っていただきました。


ハンドルは前のオーナーによってナルディ製に変更されています。オリジナルが経年劣化したために付け替えられたと思われます。

この型のエスプリにはパワーアシストがないため、比較的大径のハンドルです。交差点で曲がる時など、低速では相当な腕力が必要です。


回転計と速度計を中心にいくつものメーターが並ぶインパネは、その気にさせてくれるインストルメントです。左から、油圧計、回転計、ブースト圧計、速度計、ちょっと反射しているのが水温計です。

中央の白い星型は、路面の凍結警告灯です。通常は何も光りませんが、低温になると緑ランプが点き、さらに下がると赤ランプも点きます。箱根を氷点下の時に走っていてこれらのランプが点灯し、ちゃんと動作すること実証済みです。

上部左右にあるダイヤルは、メーター類のバックランプの輝度調整で、左側がメーター、右側がエアコン操作パネルの明るさを調整します。何気にこういうところに手間をかけていて、豪華装備(SE=Special Equipment)たるゆえんです。


右側のクラスターには、ハザードランプと、フォグランプのスイッチがあり、燃料計がこの内側にあります。


左側のクラスターには、ポジショニングランプと、ライトなどのスイッチがあり、内側に油温計があります。


オーディオ機器は前のオーナーによって別の機種に換装されていますが、古すぎてマニュアルもなく、使い方がわかりません。ちなみにラジカセです。CDプレーヤーはおそらく車体の振動が大きくて使い物にならないと思います。

エアコンは効かないのですが、フロントガラスのデフォッガーが割に効くので寒い日や雨の日も安心です。


何とも厚みのあるドアです。デザインの都合上、厚いのだと思われますが、閉まるときの音はカチャリって感じで、重厚さは微塵もなく、ロータスらしい軽い感じです。


ドアヒンジ。オートバイばりにハーネスケーブルが丸見え・・・


右ドア


矢印があるのはドアミラーの調整スイッチです。


左ドア


なぜか両方のドアに、ライター(丸い突起)と灰皿(白い矩形)があります。




以下は、エスプリについてあれこれ思うところを書いたので、ご興味があればお読みください。

■エスプリの変遷

エスプリはヨーロッパの後継機で1976年にデビューしました。2004年の最終型V8アニバーサリーまで28年間の長きに渡って合計1万台以上が製造されました。

初期のデザインはあのジョルジェット・ジウジアーロ氏によるもので、モデルチェンジのたびに排気量のアップや空力性能の向上、ターボ化などされていきます。1987年に当時ロータス社内のデザインチームのピーター・スティーブンス氏によって大幅なモデルチェンジをします。

ジウジアーロ氏デザインの初期型(S1)からS3までを通称ジウジボディ呼び、スティーブンス氏デザイン以降のモデルをニューシェイプと呼びます。個人的にはすっきりとしたジウジボディが好みですが、動力性能や機械としての完成度では新しいニューシェイプの方が優れているようです。

■映画に登場

映画007の10作目『007 わたしを愛したスパイ』で潜水艦になるのはジウジボディのS1です。

また同じ007シリーズの12作目『007 ユア・アイズ・オンリー』にはスキーキャリアを付けたエスプリが登場しますが、これはジウジボディのエスプリターボです。

一方のニューシェイプは、『氷の微笑』でシャロン・ストーンが公道をアグレッシブに走ったり、

『プリティ・ウーマン』でリチャード・ギアが友人の弁護士から急遽、借りたエスプリの慣れないマニュアルのシフトチェンジに苦労し、助手席に乗せたジュリア・ロバーツに「車を壊す気?」と怒られたりします。


■このモデル(SE)を選んだ理由

スーパーカー世代の自分にとっては『サーキットの狼』の主人公が乗るロータスヨーロッパは特別な存在です。子供の頃は「ロータスっていう会社で、すんげー車を作っている」と思っていましたし、長じて、F1に参戦していることや、日本車にハンドリングバイロータスというチューニングを行う、スペシャリスト集団であると見聞きし、いつかは自分もロータスのハンドリングを味わってみたいと思っていました。

ただヘタレな自分には、個体ごとに操作性が異なるとまで言われるヨーロッパを扱う自信はありませんでした。そこでエスプリなら何とかなるかも、しかも完成度が高い(維持や操作が楽)なニューシェイプで、さらに扱いやすいインジェクションモデルということでSEを選びました。パワステではないこともこのモデルにした理由の一つです。(SEの2つ後のS4からパワステが付きます)

■エスプリの印象

雑誌のインプレ記事などでは、ピュアなコーナリングマシンのヨーロッパに対して、エスプリはGT(グランドツーリスモ)カーと評されたりもします。

確かに見た目はスーパーカー然としたウエッジシェイプでワイド&ローのフォルムですし、内装は総革張りの豪華さで、シートも広く、ゆったりとしています。

バックボーンフレームにFRPの外装というヨーロッパの基本構造は踏襲しつつ、幅広で豪華になって、おそらくは北米市場の富裕層をターゲットにしており、なんとなく軟弱なイメージがありました。

しかし、実際運転してみると、意外にスパルタンな乗り物です。サスが硬くて車体はユサユサ振れ、建て付けの悪さからか常にどこかしらでガタゴトと音がします。とてもデートカーに使える代物ではないです。

反応性の良いハンドリングは、逆に路面のギャップに弱く、常に両手でハンドルを支える必要があります。

ショップの店長からは、トラブルの予兆である音と匂いには気をつけるようにも言われていますので、運転中は全く気を抜くことができません。さらにた全てにおいて重い操作性で、半日乗っただけでヘトヘトになります。

■操作性

全てにおいて「重い」という印象です。ノンアシストのハンドルはもちろん、サーボが小さいブレーキはしっかり踏み込まないと効きません。アクセルもクラッチも現代の車からすれば格段に重く、それなりの踏力を要求されます。

極めつけはシフト操作で、ルノー製ミッションはなかなかに腕力が必要で、よく言われるシフトが小気味よくスコスコ入る、という訳にはいきません。特に2速はシンクロが弱いせいか、エンジン回転をできる限りドロップさせて、クラッチをスパッと切らないと入りません。これはワインディングで大きなハンデとなります。しかも前出のようにハンドルから手を離す時間は短くしなければなりませんから、エスプリをきちんと走らせるには、このシフトのタッチを左手にしっかりと覚え込ませる必要があります。

なおミッションは当初シトロエン製で、こちらは「ミドシップらしからぬ良好な操作性」と雑誌のインプレにありましたから、ルノー製ゆえの渋さといえます。もっともシトロエン製は壊れやすかったと聞いていますので、操作性よりも耐久性が優先されて、変更されたと思われます。

■エンジン

エンジンはショートストロークで回転を上げないとパワーが出ません。ただインジェクションのおかげで、2000回転以下でもむずがることなくトコトコ走ってくれますから、町中や国道を流すときは、低い回転で気軽に走れます。

「スーパーの買い物にも使えるよ」と別のエスプリオーナーに言われたことがありますが、自分も実際にショッピングモールに出かけたり、近所の酒屋さんに乗って行ったことがあります。

エンジンをばらした方々のブログを読むと、エスプリのエンジンはバランス取りがしっかりされているようです。またシリンダー内壁はレーシングエンジンと同じくニカジルメッキが施されています。

確かにストレスなく滑らかに回るエンジンだなという感じはありますが、パワーの上がり方や、排気音は淡々としていて、高性能だけど面白みに欠けるという印象です。とは言え、ミドシップですから、後ろから聞こえるエンジン音や、運転席の耳元で聞こえる規則正しい吸気音にはワクワクします。

エンジンが本領を発揮するのは、3000回転を越えて、ブースト圧がかかってからです。そこからはシューッという吸気音とタービンの甲高い音を伴って一気に加速します。ターボラグが大きいので、早めにアクセルを開ける必要があり、回転がドロップしてしまうと再加速は、情けないほどもたつきますので、的確なシフト操作とアクセス操作が求められます。

ちなみに燃費はワインディングで6~7km/L、高速で10km/Lという普通の車並です。

■ワインディング

場所によって、性能を発揮できるか、そうでないかが、かなり明確に分かれます。

車幅が186cmもあるので、日本の道路では相当に窮屈で、例えば箱根の十国峠では車線内にボディを収めながら走るのはなかなかに大変です。対向車で観光バスが来ると、バスは大概フロントが車線をはみ出しますので、こちらは道路の端ギリギリまで寄せてかわすようです。

ヨーロッパの車幅は152cmですから、エスプリで一気にデカクなりました。ちなみに同時期のフェラーリ348が189cm、ホンダNSXが181cmですから、ピッコロフェラーリより狭く、NSXより広いというサイズです。

また前出のように2速がほぼ使えませんから、車幅と併せてタイトコーナーは大の苦手です。3速以上を使う伊豆スカイラインなどがベストロケーションで、道幅があって、3~5速を使い分けられれば、ターボエンジンのパワーとミドシップのハンドリングを存分に発揮できます。

コンパクトな4気筒をリアのバルクヘッドギリギリに縦に積むエスプリは、正統なミドシップで、前後の荷重バランスに優れています。ノーズは軽く、荷重変化とステア操作で、一気に向きを変えます。この時のブレーキのタッチは改善したいポイントの一つですが、わずかな入力でフロントにクッと荷重がかかりますし、アクセルを開けるとリアはガッチリ踏ん張りますのでコーナリングでストレスを感じることは全くありません。

前後のタイヤがバランスしながら車体中心を軸に曲がって行く、なんとも不思議な感覚。「こんな乗り物が世の中にあるのか!」と思う瞬間です。しかもこの時硬いサスは全くロールしません。ドライバーは横Gに対して、左足でフットレストを踏みつけてひたすら姿勢を維持します。

■部品の流用

大して大きくないロータス社ですから、1台の車を完成させるのに沢山の部品が他社から流用されています。外装はともかくとして。主要パーツも流用なのは、それが優れているからなのか合理的過ぎるのか、よくわかりません。知っている限りの流用品を紹介します。

・フロントのダブルウィッシュボーン: オペル・アスコナ
・フロントブレーキディスク: オペル・アスコナ
・リアブレーキディスク: アルファロメオ
・エンジンブロック: ボクスホール
・ミッション: ルノー・アルピーヌ・V6ターボ
・ドアミラー: シトロエン
・ドアノブ: ランドローバー
・リアランプ: トヨタ・AE86レビン

■故障

自分も買う時に、調べたり聞いたりしましたが、必ず聞かれるのが「ロータスって壊れるの?」ということです。

誤解を怖れずに言うと、機械ですから必ず壊れます。壊れやすいかどうかは、何と比較してということになりますが、あまり多種の車を所有したことがないですし、実はエスプリが初めの外車なので、何とも言えません。まして個体差があり、しかも中古車となれば、前のオーナーの使い方やそれまでの整備状況によって異なると言えるでしょう。

参考までに所有した3年半の間に壊れたところを紹介します。

・ガソリンタンクの腐食と燃料漏れ
これはエスプリのお約束みたいなものです。鉄製のタンクをスポンジで覆って搭載しているそうで、給油の時にタンクの外側が結露しますが、その結露した水がスポンジに溜り、タンクを腐食させて、いずれ燃料が漏れるようになります。

自分のは、左側はステンレスタンクに換装済でしたので、「次は右のタンクだね」と納車の時に店長さんに言われていましたが、その翌週に燃料がダダ漏れしました。納車直後と言うことで随分とサービスいただいてステンレスに交換していただきました。

・オドメーターのギア破損
オドメーターを動かすダイキャスト製のギアが破損しメーターが動かなくなりました。ギアを交換していただきました。

・燃料計のセンサーの不調
センサーにダンパーがあるのですが、それが効かなくなって燃料計の針が左右に大きく振られるようになりました。センサーを修理していただきました。

・左リアのハブベアリング交換
異音がするので、交換していただきました。

・カムカバーからのオイルにじみ
カムハウジングのOリングを交換していただきました。

製造後四半世紀以上経った車ですから、そこかしこが壊れても不思議ではないのですが、以上が修理の履歴です。この手の車を持つ人は自虐的に故障自慢をしたがる傾向がありますが、幸い自慢できそうな故障は今のところ起きていません。お世話になっているショップさんで、ちょこちょこ調整やら注油やらをしていただいているためとも思われます。


最後に恒例(?)のエスプリ歴代キットのご紹介いたします。

1976年12月、アオシマはクリスマス商戦に向け、日本初のスーパーカー・キット「1/20 ランボルギーニカウンタックLP400」を世に放ちます。マンガ「サーキットの狼」のヒットをいち早く察知したアオシマの英断でした。カウンタックは1,000円と比較的高価であったにも関わらず、バカ売れしました。アオシマは抜かりなく第2弾も用意しており、年明けの1月には3,000円というさらに高価な「1/16 ランボルギーニカウンタックLP500S」を発売し、子供たちのお年玉をかっさらったのでした。

他社もこの流れに追従し、1977年から78年の2年間に、王道のフェラーリ、ランボルギーニ、ポルシェのほか、マイナーメーカー車、ショーモデル、プロトタイプ、レーシングカーなど、日本に情報が入ってきたほとんどすべての「ガイシャ」がキット化されたといっても過言ではないでしょう。エスプリのキットもその文脈の中で誕生したのですが、他のスーパーカーと一味違う立ち位置も有しておりました。そう、「ボンドカー」の冠です。

Aoshima

驚くべきことに、この青島の駄菓子屋プラモが日本初のエスプリのキットでした。(1977年7月)

ランボルギーニ・ミウラ、マセラティ・ブーメラン、BMW3.5CSLとの組み合わせで300円。1キットは75円相当。内容は推して知るべし。ただし、スーパーカーブームだった当時、このアソートキットはなかなかの人気で、どこも品薄、手に入れるのは大変だったことを覚えています。


Bandai 1:16

1977年12月初版。1:16のビッグキットゆえ、左右ドア、ボンネット、リアハッチとフル可動。3,000円という高価なキットで、足回りにダイカスト部品が奢られていました。金型が失われた現在、お宝キットとして高価で取引されています。


Eidai 1:24 & 1:25

1977年12月の映画公開直後の1978年1月に販売開始。ちゃんと正式な版権を取っています。それゆえか、お値段は当時の 1:24 としてはお高めの800円ですが、シャーシの大半を電池とモーターが占める大味なキットで見どころはなし。後に版権無しバージョンが500円で売られています。


1978年7月初版、300円。上のモーターライズキットをゼンマイ駆動にした廉価版と思われますが、なぜかスケールは 1:25 。(1:25 が主流の北米への輸出を狙ってか?)私は子供の頃、潜水艦パーツの付いたエスプリのキットを作った記憶がありますが、それがこれだったのかもしれません。



Nichimo 1:24

1978年5月初版。600円。当時のカーモデルに対する要求からモーターライズとなっていますが、なかなかの精密キットと言えましょう。リアハッチは可動し、上げ底とはいえ雰囲気のあるエンジンを見ることができ、コクピットの再現性も高くあります。


80年代に入って(1981年頃)、1,000円に値上がっています。


1984年版。パッケージ変更。


最後期には「絶版」を強調した形で「再販」されていました。(当社はまもなくプラモデルから完全撤退するから、今のうちに買っとけ(笑)、的な?)



FUJIMI 1:24

2015年12月、フジミが突如としてエスプリを完全新金型を発売しました。最初に潜水艦仕様がリリースされ、

まもなく通常の「シリーズ1」もリリースされました。それまでニチモが長らく占めていたエスプリのキットの「決定版」の座はフジミに譲られることになったのです。

以下、海外メーカーのキットをご紹介します。

Entex 1:25

エンテックスは香港の模型商社。倒産や廃業した日本メーカーの金型を流用したキットの取り扱いが多く、このエスプリはエーダイの金型が流れたもの。ただタイヤの金型だけは一緒に流れなかったとみえ、海外メーカー品に多い硬質ゴム製で扱いづらく雑なモールドのタイヤに差し替えられていました。


Airfix 1:24

1992年頃発売。箱絵からエンテックス(エーダイ)から流れてきたものと分かります。スケールはエンテックスとは異なり 1:24。


Heller 1:24

エアフィックス版の箱替え。エレール・クオリティを求めると肩透かし。ステッカー、タイヤを含め中身は全くエアフィックス=エーダイと同じ玩具クオリティ。


Monogram 1:24

1990年発売。これまでの「ジウジボディ」に対し、モノグラム製は、唯一の「ニューシェイプ」のキット化でした。


モノグラムの日本代理店だったハセガワは、ローカライズ版を販売しています。

1994年、「スポーツ300」に金型改修されています。実車の「スポーツ300」はエスプリ・ターボのホモロゲ獲得のためのレースベース車で、2.2Lターボから市販車で最高出力300馬力以上を誇りました。わずか64台しか生産されていません。



Toykit

トイキットは英国の玩具メーカー。再現度合いはともあれ、他社にないエセックス・バージョンをキット化しているのでご紹介。ただ、似ているかどうか以前に、エンジンがフロントにあるのは・・・???

レベルでもOEM供給を受け、6歳児以上向けとして販売。




エスプリの場合、ダイカスト製の完成品(ミニカー)のラインアップが豊富かつ個性的なのでご紹介します。

Minichamps 1:43

ドイツらしい精緻な設計でマニアを魅了するミニチャンプスは、 「ボンド・コレクション」・・・あくまで劇用車のミニチュアとして商品展開しておりました。



Autoart 1:18

香港のオートアートの作風はミニチャンプスのと非常に似ており、無関係とは思えなかったのですが、実のところ、オートアートはかつてミニチャンプスの下請けであったとのこと。(オートアートはここで紹介する 1:18 の他、 1:43 でもエスプリ・シリーズを展開していました)

シリーズ1の色違い3種。


定番の007、潜水艦仕様。


007劇用車、ターボ・スキー仕様。


シリーズ2ターボ、各色。


最高出力350PSを誇る3.5L・V8ツインターボを積んだ「V8」もモデル化。3色展開。



ERTL / JOYRIDE 1:18

2005年発売。最も新しい設計を持ち、潜水艦への完全変形を売りに鳴り物入りで発表されたものの・・・


実際にモノが出てみると、残念なことにプロトタイプには付いていたドアミラー、ウィンドウのシェード、ミサイルの垂直発射装置などが省略されておりました。


映画公開当時に発売されていたダイカストモデルは、自国のコーギー製と永大グリップ製の2つが有名です。

Corgi 1:36

コーギー製エスプリには、潜水艦仕様とスキー・ターボの2種類があります。1/36の変則スケールであるのが残念なところですが、現在でも新品が入手可能な息が長い製品です。(コーギーは国際スケールの1:43でもエスプリを出していますが、ここでは割愛)


やはり人気は潜水艦仕様。40年以上も造られているため、市場には100万個以上も出荷されており、パッケージにも様々なデザインが存在します。(以下の画像は初期のもの)

このように左右4枚とリアの大きな水中翼は格納することができます。他のギミックとして垂直発射されるミサイルが付属しています。


Eidai Grip Technica 1:28

日本では空前絶後のスーパーカーブーム真っただ中の1977年、「ノーマルタイプ」と「007仕様」の2種類のエスプリが、1:28という変則スケール(日東製「サーキットの狼」プラモデルと同じ)で出されました。


ノーマルタイプ

007仕様は、コーギー製にはない4輪を格納して潜水艦に変形するというギミックを持たされています。40年前に作られた子供向け玩具ゆえの甘さを持ちながらも、劇用車の設定をもっとも忠実に再現したミニカーとして、国内外のマニアに高く評価されており、永大が倒産したため再販の可能性もないことも併せて、現在、超絶プレミアム価格(中古で5万円から。未開封で程度が良ければ10万円)にて取引されています。


ブリスターパック



底にはギミックの説明書き。


ホイールの内側に水中翼が隠されているのが分かると思います。また、子供がタイヤ格納状態でも転がせるよう、シャーシに3つの補助輪が付いているのも確認できます。



Eaglemoss 1:8

現時点で世界最大のエスプリのミニチュアは、イーグルモスの 1/8 です。イーグルモスは、ディアゴスティーニなんかと同業の英国の分冊百科メーカーです。そう、週ごとに販売されるパーツを1年以上かけ集めて完成させるというアレです。

このエスプリは、アストンマーチンDB5に続くボンドカーシリーズ第2弾として、英国のみで発売されたもの。残念ながら可変ではないのですが、組み立て時に潜水艦仕様とノーマル仕様の選択できるようになっています。

全長58㎝!!まあ、ただただ大きいだけで大味、という感じもしなくもないですが、並外れてデカいということだけで、有無を言わせず圧倒してしまうというのも事実。ここまでやったなら、1/8のボンドとボンドガールの可動フィギュアも欲しいところ。


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